三軸加速度センサーによるパーキンソン病のすくみ足の解析
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概要
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【目的】パーキンソン病(PD)のすくみ足(FOG)に関する先行研究において用いられている定量的な評価方法は、測定上の制約が大きく一般的な評価とはなり難い.そのため、臨床でのFOG評価は主観的な方法によってなされることが多い.FOGは、状況依存性であり、家屋内での発現頻度が高いことから実際の生活環境でも実施可能な評価方法が望まれる.本研究の目的は、三軸加速度センサー によって、FOGを有するPD症例の特徴を調べることである.<BR>【対象】PD症例1例(50歳代,女性,Hoehn-Yahrの分類3,UPDRS運動能力検査18点,UPDRS日常生活動作すくみ足grade 3,FOGQ16点)と、健常対照1例(40歳代,男性)を対象とした.被験者には、研究目的を十分に説明し研究への参加の同意を得た.<BR>【方法】加速度の測定はユニメック社製三軸加速度センサーを使用した.センサーは第二仙骨部に貼付した.サンプリング周波数は1000Hzとした.PD症例では、薬効の作用が良好な時間帯に測定した.歩行の条件は、健常対照では平地の自由歩行,PD症例では、自由歩行と複合課題下歩行(水の入ったコップをトレイに載せた状態での歩行)とした.得られたデータをカットオフ周波数6Hzで平滑化し、鉛直,前後,左右の各方向の波形を観察した.次に、各データの周波数解析ならびに1ステップ分の時間をラグとして自己相関分析をおこなった.<BR>【結果】PD症例の複合課題下歩行では、FOGの3つのサブタイプのひとつであるtrembling in placeを誘発することができ、その状態とFOGから脱却した後のデータのサンプリングに成功した.健常対照の鉛直方向の加速度は、二峰性の波形を示した.PD症例のFOG発現時では、鉛直方向の加速度の二峰性の波形が変形し、一峰性への移行またはひとつの峰が減少する傾向がみられた.前後方向の加速度は、前方への成分が低下する傾向がみられた.FOG発現時には、波形のピーク間距離の狭小化、前後方向の加速度の高周波数域への移行がみられた.前後方向加速度の自己相関係数は、健常対照(0.679),PD症例自由歩行(0.451),複合課題下歩行(0.165)であった.<BR>【考察】FOG発現時の加速度データの分析結果は、trembling in placeの特徴である歩幅の低下と歩調の増加の組合せを反映した所見と推察される.これは、床反力計や圧センサー付きインソールなどによってFOGを定量的に評価した先行研究結果と矛盾しない類似の客観的な情報が、三軸加速度センサーによって簡便に提供できる可能性を示している.一方、複合課題はFOGの誘発要因として知られているが、本症例では、複合課題によって歩行中の左右脚の対称性の指標である自己相関係数が著減したことから、左右脚の非対称性はFOGの発現と関連している可能性が推察される.
- 公益社団法人 日本理学療法士協会の論文
公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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