損傷骨格筋に対する機能的過負荷と筋肥大
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
【目的】骨格筋量はタンパク質の合成および分解の動的バランスにより変化する.例えば、トレーニングなど筋肥大を引き起こすような刺激が負荷されると、タンパク質の合成が分解に比して増加する.逆に、骨格筋への荷重除去や不活動などは筋萎縮を招くが、この時はタンパク質の分解が合成より相対的に増加すると考えられる.骨格筋への荷重の増大は筋タンパク合成を刺激し、筋肥大を誘発する.荷重の受容には骨格筋細胞の構造が重要であると考えられるが、その分子機構は明らかでない.荷重の受容に骨格筋細胞の構造が重要ならば、損傷した骨格筋は荷重の増大を受容できないと考えられる.そこで本研究では、骨格筋損傷モデルを用いて、損傷骨格筋に対する荷重の増大の影響を検討した.<BR>【方法】すべての実験は豊橋創造大学が定める動物実験規定に基づき,豊橋創造大学生命倫理委員会の審査・承認を経て実施された.実験にはC57BL/6Jマウス(雄性、7週齢、90匹)を用い、コントロール群(n=30)、筋損傷群(I群、n=24)、荷重を増大させる群(L群、n=18)および筋損傷と荷重増大を組み合わせた群(IL群、n=18)に分類した.骨格筋損傷は、0.1 mLのcardiotoxin(CTX)をヒラメ筋に筋注することにより惹起した.CTX筋注直後に、共同筋である腓腹筋腱ならびに足底筋腱を切除することでヒラメ筋への荷重を増大させた(共同筋腱切除による機能的過負荷).処置後、2、4および8週間後にヒラメ筋を摘出し、筋湿重量、筋乾燥重量、筋水分量、筋タンパク量、筋衛星細胞数ならびに病理学的な評価を行った.<BR>【結果】機能的過負荷は、筋湿重量、筋タンパク量ならびに筋線維断面積を増大させた(p<0.05).CTX筋注により筋タンパク量は低下し(p<0.05)、その後徐々に回復した.CTX筋注による筋損傷からの回復過程に機能的過負荷の効果は認められなかった.<BR>【考察】本研究の結果から、筋損傷により筋肥大を引き起こす刺激である荷重を負荷しても、筋肥大は誘発されないことが確認された.したがって、荷重の増大による骨格筋肥大は、骨格筋細胞自身に内在する荷重受容機構が重要であることが示唆された.<BR>【まとめ】損傷した骨格筋に対する荷重の増大は、トレーニング効果をもたらさないことが示唆された.<BR> 本研究の一部は、文部省科学研究費(若手B, 19700451; 基盤B, 20300218; 基盤A, 18200042)、花王健康科学研究会助成金ならびに(財)日本宇宙フォーラムが推進している「宇宙環境利用に関する地上公募研究」プロジェクトの助成を受けて実施された.
論文 | ランダム
- 21467 積雪時における高層免震建物の地震応答解析(高層免震・連成解析,構造II)
- 21459 免震建物の地震時浮き上り解析用簡易モデル(免震解析,構造II)
- 21455 地震動のS_A-S_D曲線を用いた免震建物の地震応答評価(免震解析,構造II)
- 21450 簡易転がり支承を有する床免震の地震時挙動 : その2 地震応答解析(免震支承・ダンパー,構造II)
- 21449 簡易転がり支承を有する床免震の地震時挙動 : その1 振動台実験(免震支承・ダンパー,構造II)