車いす座背角と身体アライメント及びリーチ範囲の関係:健常者による予備的検討
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概要
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【はじめに】車いすは移動だけでなく良姿勢と安定した座位を提供するものでなければならない。今回は第38回大会において報告したシート角度との関係だけでなく、背もたれと座面の成す角度(座背角)も考慮し、身体アライメントおよび上肢リーチ範囲の関係について報告する。<BR>【対象】健常男性2名。(被験者A 32才、164cm、55kg、被験者B 31才、172cm、70kg)<BR>【方法】普通型車いす(クイッキィーレボリューション)とJ2クッション、J2バック(サンライズメディカル社製)を使用した。座背角は90度と98度に設定し、車いすを0度、5度、10度の3段階に後方傾斜させて、各角度においてアライメント変化(頸部、体幹、骨盤)と上肢リーチ範囲を測定した。アライメントは身体に装着したマーカーを矢状面よりデジタルカメラで計測し、画像処理ソフトを用いて解析した。股・膝・足関節90度姿勢におけるアライメントを基準値とし、各車いす角度でのアライメントの差を検討した。リーチ範囲の測定には牽引式スピードメーター(VINE社製)を使用した。スピードメーターのワイヤーを被験者の指尖に取り付け、被験者はできるだけ大きく前方・上方に動かし、引き出されたワイヤーの長さからリーチ範囲を算出した。<BR>【結果】被験者Aは座背角90度、98度いずれにおいても、後方傾斜角度が大きくなるほど差が大きくなり、0度・5度間よりも5度・10度間の方が大きかった。すべてのアライメントにおいて座背角98度の方が90度よりも基準に近い値を示した。被験者Bでは頸部、骨盤アライメントが後方傾斜角度10度の時に基準と最も大きな差が生じた。いずれのアライメントも座背角90度の方が98度よりも基準に近い値を示した。被験者Aのリーチ範囲は座背角98度の場合、後方傾斜角度の増大に伴って減少傾向にあり、0度・5度間よりも5度・10度間の変化が大きかった。被験者Bの上方リーチでは座背角98度より90度の方が大きかった。<BR>【考察】被験者A、Bともに後方傾斜角度の増大に伴って、基準と各角度でのアライメントの差が大きくなる傾向が示された。すなわち後方傾斜角度は少ない方が望ましい。さらに、後方傾斜角度間の変化の度合から5度以下の設定が望まれる。リーチ範囲では後方傾斜角度の増加に伴う変化や座背角による違いも生じたが、明確なアライメントとの関係や一定の変化は観察されなかった。今後、被験者数を増やし、検討を継続していきたい。
- 公益社団法人 日本理学療法士協会の論文
公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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