老齢者の運動負荷試験における至適負荷量の検討:AT検出を目的として
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概要
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【目的】<BR>老齢者の運動負荷試験では負荷量設定が困難であり、その設定について統一された見解は得られていない。ATの検出には、運動負荷開始時の負荷量をAT以下に設定する必要がある。また、Wassermanは、『AT以下の負荷であればVO<SUB>2</SUB>は定常負荷開始後3分以内に定常状態に達する』としている。当院でも老齢の患者に対して運動負荷試験を実施しているが、軽い負荷でもVO <SUB>2</SUB>が直線的に増加してしまうことを多く経験する。"軽い"と思われる負荷であっても、老齢者においては無酸素性代謝閾値(AT)を越えている可能性が高い。本研究では、定常負荷とランプ負荷を組み合わせた低・高負荷の2種類のプロトコールを用いて運動負荷試験を実施した。このときの1)AT検出の可否、2)酸素摂取量(VO <SUB>2</SUB>)動態の差異を検討し、老齢者の運動負荷試験における至適負荷量を決定することを目的とした。<BR>【対象と方法】<BR>対象は、老齢者群(当院入院中の患者6名・平均77.8才。慢性心疾患を有し、著明な運動麻痺が無く屋内独歩が可能な者)、若年者群(若年者6名・平均25.5才)とした。運動負荷試験には、座位エルゴメーター(EC-3600、OG技研)、呼気ガス分析器(CORTEX社製、METAMAX3B)を用いた。プロトコールは、低負荷(定常負荷15W・6W/minランプ負荷・ペダル回転数30rpm)・高負荷(定常負荷20W・8W/minランプ負荷・ペダル回転数40rpm)の2種類とした。安静座位後、定常負荷試験を3分間実施し、その後連続してramp負荷を実施した。被験者にはペダルの回転数を一定に維持させた。試験は自覚的症候限界域まで実施した。再試験は1日以上の間隔をあけて実施した。AT決定にはV-Slope法を用いた。<BR>【結果】<BR>1)AT検出:老齢者群において、低負荷では6名中5名でAT検出が可能であった。高負荷では5名中1名でAT検出が可能であった。若年者群では、負荷量に関わらず全例でAT検出が可能であった。2)VO<SUB>2</SUB>動態:AT検出可能な例では、3分間の定常負荷中にVO<SUB>2</SUB>が定常状態に達し、ランプ負荷開始後にVO<SUB>2</SUB>の増加がみられた。AT検出不能な例では、VO<SUB>2</SUB>は直線的な増加を示し、定常負荷中にVO<SUB>2</SUB>が定常状態に達しない傾向にあった。<BR>【考察】<BR>本研究において、AT検出が不能な例では3分間の定常負荷の時点で既にATを超える負荷であったと考えられた。<BR>AT検出を目的とした場合、運動開始時の負荷量はAT以下に設定する必要がある。今回の結果より、運動開始時は3分間の定常負荷でVO<SUB>2</SUB>が定常状態に達する負荷量として設定することが重要と考えられた。
- 公益社団法人 日本理学療法士協会の論文
公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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