先天性心疾患と気道狭窄を持つ発達遅滞児への急性期からの長期的介入
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
【はじめに】我々は先天性心疾患の手術後に気管軟化症、左反回神経麻痺と診断された染色体異常(第6番染色体長腕部分欠失)を持つ児の抜管時の呼吸理学療法(RPT)を経験したので報告する。【症例および経過】在胎40w6d、2120g Apger5/7で出生した男児。生直後からチアノーゼ、多呼吸あり。心エコーにて肺動脈閉鎖兼心室中隔欠損(PAVSD)、主要体肺動脈側副血行(MAPCA)、右側大動脈弓、卵円孔開存、両側上大静脈、左部分肺静脈還流異常(PAPVC)と診断された。生後7w5dに根治術を施行した。術前より右上葉無気肺 があり挿管管理されていた。術後も呼吸不全が持続したため、生後9w0dより呼吸理学療法を開始した。【経過】小顎症があり胸郭は低緊張により陥没呼吸が強く、半腹臥位と側臥位で姿勢管理を行い、生後9w1dに抜管した。分泌物は白濁粘稠で多量、重度な狭窄音で覚醒時の啼泣でチアノーゼが出現たため、酸素2リットル、鎮静剤を使用しながら姿勢管理を継続した。生後10w4dに大血管による気管気管支(右上)の圧迫を認めたため、大血管の圧排を解除するため右腹臥位とし、拒否が強いときのみ左側臥位とした。さらに11w1dにファイバースコープにより左声帯麻痺と気管軟化と診断された。11w6dより下顎のスラスト運動により頚部周囲の活動性を高め筋緊張を改善する目的で、吸綴訓練を開始し抱き方と併せて母親指導した。生後12wころから活動性が増え腹臥位においても左向きを好むようになり、両腹臥位と左側臥位で管理した。生後14wに徐々に心不全症状が出現したが、これは遺残MAPCAからの右上葉への肺血流過多が原因であり、19w0dに行ったカテーテル手技によるMAPCAcoil閉鎖で改善した。検査時の挿管で抜管困難となり再挿管を繰り返したが21w4dに抜管した。右上葉無気肺は緩解と増悪を繰り返した。26wまでは左肺野に含気不良を認めたが左右腹臥位と左側臥位管理を継続した。この間も狭窄音が覚醒にて顕著となるため鎮静剤を使用した。26wから経口哺乳開始し、36w6dに退院となった。強い狭窄音は残存していたが上記の姿勢により軽減したため退院後も姿勢管理を行った。さらに運動発達の援助により活動性が増えた。42wからペースト食が開始となり、1yで寝返りが可能となった。1y1mのファイバースコープにより気管軟化症が改善し、1y3mには声帯の外転運動の左右差は消失していた。現在、1y6mで狭窄音は上気道感染症で増強するものの安静時にはほぼ消失した。呼吸状態を長期的に良好に保った結果、心臓カテーテル検査では心機能の改善を認めた。【考察】長期の姿勢管理を退院後まで継続し、同時に哺乳や運動発達の援助を行った。急性期から母親とともにRPTを行うことで、退院後、家庭での姿勢管理の理解を得ることができた。長期的な姿勢管理と同時に発達援助を進めたことで、反回神経麻痺や気管軟化症などの重症な気道合併症があるにも関わらず、心臓手術後の経過を良好に保つことができたと考える。
論文 | ランダム
- ナノ精度機械加工による機能性インターフェース創成を目指して
- CWレーザ背面照射法(CW-LBI)によるガラスの内部変質(第5報) : —様々な金属のガラス内部への導入—
- 比田井先生のカリフォルニア紀行
- 高温金属とcBNとの反応性
- 高温金属とcBNとの反応性