米国柔道選手における基礎体力と心理的特性の関係
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概要
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柔道選手の競技力あるいは競技適性としての基礎体力の重要性は多くの研究者によって主張され,柔道選手の基礎体力の特徴に焦点を合わせた研究は多く報告されてきた。また,柔道選手の心理状態についての要因を明らかにした研究も報告されている。しかし,これまでの先行研究は身体的,心理的な要素を別々に研究した報告であり,我々の知る限りでは,同じ選手にこれらの要素を同時に研究した報告は見当たらない。スポーツに関する多くの医学と心理学の英語の文献では,練習には心理的な効果があるとしてきたが,柔道においてこれらの要素の関連性を調査した研究,報告はないと思われる。本研究は,柔道の発展と柔道選手の競技力向上に貢献することを目的に,過去の研究が柔道の強化や試合成績と関連して重要だと報告した基礎体力と心理的特性の関連性について,二つの研究から検討を試みたものである。研究1では,20人のアメリカ人一流柔道選手を対象にして,我々の作成した8要素10項目の基礎体力テストと5種類からなる心理学テストを実施した。また,研究2では12人のアメリカ人一流柔道選手を対象にして,研究1で用いた測定項目とは異なる身体の強さと生理的反応を測ることを目的とした5項目の基礎体力テストと6種類からなる心理テストを実施し,それぞれ基礎体力と心理的特性の関連性を検討した。二つの研究結果から次の知見が得られた。1.より基礎体力に優れている選手は,基礎体力が劣っている選手よりも,不安,怒り,疲労をあまり感じることが少なく,自己により自信を持ち,また,より内省的な統制力を持ち,さらに,良い緊張と活気があり,より効果的なストレス対処法を用いている等の心理的特徴が見られた。2.これらの結果は,柔道の稽古や基礎体力トレーニングを通して生ずる柔道選手の身体的発達は自信の基となる肯定的自己像を生み出す心理的効果があると推察され,今後,柔道選手に対して競技力向上のための指導のみならず,柔道を効果的に指導するための有益な資料になると思われる。
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