「海からの贈りもの:ミネラル・生物・地域振興」野生植物由来ミネラルの投与によるヒラメ稚魚の成長促進,生体防御活性増強およびストレス軽減
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概要
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養殖場では,魚の成長率低下や感染症の頻発が生じている.体の恒常性を保つためには適切なミネラル摂取が必須である.本研究では,ヒラメ稚魚を対象に,野生植物由来ミネラル(植物ミネラル)の経口投与が,その成長,生体防御活性,ストレス応答に及ぼす影響を調べた.体重約6gのヒラメを3群に分け,市販飼料を与える群(対照群;C群),同飼料に植物ミネラルを0.25%の割合になるように添加した餌を与える群(低濃度群;L群),同2.5%の割合になるように添加した餌を与える群(高濃度群;H群)とした.投与試験開始から3および6週間後に魚を取り上げ,体重と全長を測定すると共に,生体防御指標として,体表粘液中の総溶菌活性,各血球組成,顆粒球の貪食率およびNBT還元(殺菌)活性を測定した.また,飼育中におけるストレス状態の把握のため,無眼側の黒化率を調べると共に,投与試験開始から6週間後では,空中曝露試験に伴う血漿中コルチゾル濃度の経時変化を調べた.結果は以下の通りであった:(i)6週間の投与試験終了時にはL群,H群ともに,C群に比べて,体重や肥満度が増した.(ii)L群およびH群では,体表粘液中に分泌されている総溶菌活性,顆粒球の貪食能やNBT還元活性が有意に上昇した.L群では,顆粒球数も増加した.(iii)L群およびH群の無眼側の平均黒化面積率は,C群に比べて低くなった.また,空中曝露後の血漿コルチゾル(ストレスホルモン)濃度は,H群とC群の間に差はみられなかったものの,L群はC群に対して有意に低い値を示した.以上のことから,ヒラメ稚魚への植物ミネラルの投与は,成長促進,生体防御活性賦活および過剰なストレス反応の抑制効果を有していることが分かった.
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