関西医大剖検白書1951–2010
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概要
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関西医科大学の病理学講座の開設と病理解剖(剖検)が開始されるまでの歴史ならびに1951 年から2010 年に亘り病理学講座ならびに病理部で施行された6,108 例の剖検症例の主として主病診断を中心に行った解析を記述する.年間剖検症例数は1951 年から年次を追うごとに増加し,1981 年には225 症例と最多となったが,その後漸次減少し,2002 年には45 症例と最少を記録した.しかし,最近10 年間は年間60 例近くの剖検を施行している.死産児を含む新生児(<28 日齢児)の剖検頻度は1950 年代後半から1960 年代前半にかけて高かったが,以後新生児呼吸器系疾患症例の減少に伴って漸減した.解析期間を通して悪性新生物症例が剖検例の約半数( 32–63%,平均48%) を占め,男女比は1.9:1 で,年齢分布を見ると男女とも症例数は0–4 歳に小さな山を認め,その後一旦減少し,10 歳代後半から加齢に並行して増加して65–69 歳でピークに達した.なお,多重癌の検出頻度は年代を追って上昇した.最近の30 年間では心疾患症例数が脳血管疾患症例数を上回った.年代特異的疾患としては1950 年代前半に高頻度にみられた結核のそれ以後の著減,1950 年代末から60 年代中頃を中心とした日本脳炎と1980 年代後半から90 年代にかけてのエイズ症例の出現が挙げられ,低頻度ながら1960 年代以降では主病診断として深在性真菌症の経年的増加をみた.また高度経済成長期(1950 年代中頃から70 年代中頃まで)の大量のアスベスト消費を反映して,1970 年代以降では悪性中皮腫剖検症例が散見された.本学の剖検前史ならびに60 年に亘る剖検症例の変遷につき記述した.
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