Branched Graft Inversion techniqueを用いた弓部全置換術の1治験例
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概要
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胸部大動脈瘤(TAA)に対する弓部全置換術(TAR)において,末梢側吻合は深く視野に制限があるため,運針や止血に難渋することがある.4分枝人工血管を直接吻合する方法か,下行大動脈にelephant trunkを挿入して末梢側吻合を行い,4分枝人工血管と吻合するstepwise法が主流である.しかし,吻合箇所が増えるため出血のリスクは増す.今回われわれは,stepwise法と同等の視野で,人工血管どうしの吻合を必要としない,Branched Graft Inversion techniqueを考案した.症例は65歳の男性.嚢状型TAA(最大径42 mm)と診断され,手術目的に入院した.胸骨正中切開でアプローチし,上行大動脈動脈および右大腿動脈送血,上下大静脈脱血で体外循環を確立した.順行性心筋保護を行い,25℃で下肢循環を停止し,順行性選択的脳灌流を行った.末梢側吻合は,裏返した4分枝人工血管を下行大動脈に挿入し,マットレス縫合および連続縫合で断端形成した.その後,人工血管を内腔から引き出し,頸部分枝の再建および中枢側吻合を行った.Branched Graft Inversion techniqueは,比較的良好な視野で,かつ1回で末梢側吻合が行える方法である.TAAに対するTARにおいて,有効な補助手段になり得ると思われる.
- 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会の論文
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会 | 論文
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