術後対麻痺をきたした待機的腹部大動脈瘤手術例の検討
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概要
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非破裂腹部大動脈瘤 (AAA) に対する待機的手術において,術後対麻痺を合併した希な2例を経験したので報告する.症例1は80歳の透析施行中の男性で,術前の冠動脈造影検査で左前下行枝に75%の狭窄を認めたが,心機能良好であるため AAA に対し後腹膜アプローチにより tube グラフト置換術を行った.術直後より対麻痺症状を認め,術後の MRI で前脊髄動脈症候群と診断された.症例2は62歳の男性で,術前に心拍動下で両側内胸動脈を用い冠動脈バイパス手術(2枝3カ所)を行い,その後,正中切開で Y グラフト置換を行った.同時に根部に狭窄を認めた腹腔動脈および上腸間膜動脈にも Y グラフトの右脚との間に人工血管によりバイパスを追加した.覚醒後より対麻痺の合併を認めた.両症例とも冠動脈病変を合併し,胸部下行大動脈にも著明な動脈硬化所見を認めていた.症例2では内腸骨動脈の枝である腸腰動脈から脊髄へ向かう動脈の走行が CT で確認でき,術中の内腸骨動脈の遮断が対麻痺の原因になったと考えられる.胸部下行大動脈に動脈硬化が強い症例では,同部位からの脊髄根動脈の閉塞の可能性があり,このような症例では側副血行路による脊髄への血液供給が大切である.
- 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会の論文
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会 | 論文
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