日本の新医薬品の承認審査における目的の不在と不確実性:「神事」ではない承認審査は可能か?:「神事」ではない承認審査は可能か?
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概要
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新薬の承認審査は,申請された新薬の薬効評価を行い,承認又は非承認という意思決定を行うプロセスである。承認審査により,本邦での医薬品選択及び使用様態は直接・間接にコントロールされ,医療の各種アウトカムは大きな影響を受ける。これまで,承認審査制度についてはその外形的・手続き的な充実にのみ議論が集中し,組織や所属する職員が行う意思決定のあり方そのものについてはほとんど議論されていない。特に,新薬等を承認するか否かの判断を日常的に行うにもかかわらず,承認審査を通じて達成すべき社会の観点からの目的が明確に宣言されていない点は,多大な社会的費用に基づいて運営される承認審査(機関)の存在意義が問われかねない重大な点である。意思決定がad hocに行われることによる効率(例えば健康の最大化の達成)の観点からの悪影響も懸念される。さらに,薬効評価及び承認をめぐる意思決定は,不確実性下で,また,意思決定者の価値判断に基づき行われているにも関わらず,そうした構造を想定した仕組みが構築されていない。かかる状況は,目的の不在と相俟って,規制当局担当者が行った意思決定の根拠や正当性を第三者が論じることを妨げてきた。 日本の医薬品承認審査の真の意味での透明性の確保を図るためには(そして,もし社会の大勢がそれを望んでいるのであれば),こうした構造を念頭に置きつつ,意思決定に係る情報及び価値判断を個人及び組織のレベルで公にしていく努力が必要である。
- The Health Care Science Instituteの論文
The Health Care Science Institute | 論文
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