終末期医療の患者自己選択に関する実証分析
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概要
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わが国の終末期医療費は,老人医療費の20%にも上ると推計されているが,本稿は,終末期医療のあり方を考える上で極めて重要な患者の自己選択について考察した。具体的には,筆者等が持病を持つ高齢者に対して独自に行ったアンケート調査を元に,リビングウィル(生前遺言状,終末期の宣言書)の作成意思に影響する要因を探った。その結果,医療費の自己負担額については,影響しないか,影響したとしてもその弾力性は極めて低いことがわかった。一方,Conjoint Analysisを用いた分析の結果,(1)リビングウィルの実行性が確保される場合には6.0%ポイント,(2)緩和ケア病棟やホスピスが確保される環境では11.2%ポイント,(3)終末期認定の厳密化が行われる環境では3.2%ポイント,(4)告知と病状説明が十分行われる環境では9.1%ポイント,それぞれリビングウィルの作成確率が高まることがわかった。したがって,終末期医療の自己負担率を高めるといった経済インセンティブよりも,その他の法律・環境面の整備の方が,遙かに患者の自己選択を進める上で重要であることがわかった。
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