おいしさと食行動における脳内物質の役割
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概要
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味覚には,甘い・苦いといった味の質の認知的な分析の側面と,おいしい・まずいといった情動性の側面がある.日常の食卓では複雑な味の組み合わせから成る料理を味わうのであるが,その際,味の詳細な分析は難しくても,おいしい・まずいの判断はただちに行うことができる.口からの味覚情報は大脳皮質の第一次味覚野に送られ,味の質や強さの認知的識別がなされる.第一次味覚野からの情報は2つのルートに分かれて脳内を流れる.1つは前頭連合野の第二次味覚野へ行くルートで,もう1つは扁桃体へ行くルートである.この両ルートでおいしさが実感される.また,同時に脳内物質としてのβ-エンドルフィンやアナンダマイドなどの放出を促し,持続したおいしさ,陶酔感,満足感などが生じる.「おいしいものはもっと食べたい」この欲求を生じさせるのは,報酬系といわれる脳部位である.中脳の腹側被蓋野から側坐核,腹側淡蒼球を通って視床下部外側野(摂食中枢)に至る経路が報酬系で,ドーパミンが神経伝達物質として重要な働きをする.「おいしいものをどんどん食べさせる」のは視床下部の摂食中枢の活動による.この中枢には,甘味などの快感を生じさせる味覚情報が入力し,活動性を高めることが知られている.摂食中枢は副交感神経系の活動を高める作用や,オレキシンなどの食欲促進物質を産生し,脳の各部に送る働きもある.咀嚼運動も活発になる.このように,おいしいものの摂取に際して,各種の脳内物質が放出され,活発な咀嚼運動ともあいまって,脳細胞は活性化され,生き生きと元気になる.おいしいものを規則正しく適量食べることは健康の源である.
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日本顎口腔機能学会 | 論文
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