健常有歯顎者の歯根膜触・圧覚閾値と矯正治療後に生じた咬合違和感の閾値の経時的変化
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概要
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目的:近年,咬合違和感を訴える患者が増加している.しかし,感覚の異常を診断する方法は確立されていない.そこで,歯の感覚の測定に用いられてきたvon Freyの毛を用いて,健常有歯顎者の歯根膜触・圧覚閾値の臨床的参考値を求め,臨床応用することを目的とした.方法:健常被験者として,噛みしめ強度を規定したadd画像から咬合接触像に異常を認めず,咬合違和感を認めない成人有歯顎者32名(男性20名,女性12名,平均年齢26.1±3.7歳)を選択した.上下顎左右側中切歯から第二大臼歯までの計28歯を対象とした.座位,閉眼状態で測定した.歯根膜触・圧覚閾値の測定にはvon Freyの毛(touch test, North Coast Medical社)を用いて,唇・頬側面から舌側方向へ刺激した.閾値の決定には精神物理学的測定法の極限法の上下法を用い,本法を熟知・訓練した歯科医師1名が測定した.被検歯の歯根膜触・圧覚閾値の四分位範囲を求めた. その範囲の臨床的意義を確かめるために,矯正治療後に咬合違和感を訴えた成人男性(25歳)の歯根膜触・圧覚閾値を,矯正装置除去1ヵ月から,14日間隔で経時的に観察した.結果:健常被験者および臨床例ともに咬合接触像に異常を認めなかった. 歯根膜触・圧覚閾値は前歯部から臼歯部にかけて増加していく傾向を示した.四分位範囲は,上顎では切歯部0.5~1.7g,犬歯1.5~3.0g,小臼歯部1.5~4.0g,大臼歯部3.7~8.8gであった.下顎では切歯部0.3~1.0g,犬歯部0.7~3.0g,小臼歯部0.8~5.0g,大臼歯部で3.0~11.6gであった. 一方,矯正装置除去1ヵ月経過時の歯根膜触・圧覚閾値は,大臼歯部で最大190.0g,前歯部で最大7.0gであった.その後,値は減少し,装置除去3ヵ月経過時に四分位範囲内へ収束し,咬合違和感も消失した.装置除去7ヵ月においても歯根膜触・圧覚閾値ならびに咬合違和感に変化は認められなかった.結論:以上のことから,歯根膜触・圧覚閾値が歯の感覚の客観的指標となることがわかった.
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