土壌水の挙動特性と河川流出への役割:北海道・佐呂間別川流域
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
北海道・佐呂間別川(流域面積259.3km<SUP>2</SUP>)の流域斜面で,2008年6月~ 2009年 5月の期間,土壌水分量をモニタリングし,森林と牧草地における降雨・融雪に伴う土壌水の挙動を調べた。同流域の土地被覆は,主に森林(占有率75.2%)と農地(同21.5%)で,測定点での土壌構造は,森林・牧草地共に,透水性のよい有機層(A 層,平均厚さ0.3m未満)と透水性の悪い有機/ 無機層(B 層,平均厚さ約10m 以上)からなる。用いた土壌水分計は チャンネルのプロファイル土壌水分計で,8cm, 18cm, 28cm, 38cm 深度で20分間隔で体積含水率(cm<SUP>3</SUP> /cm<SUP>3</SUP> )が求められた。結果として,森林斜面では 8-28cm 深でイベント後の2~3日間は貯水状態にあり,その後は速やかに排水され,イベント前の土壌水分レベルに戻ることがわかった。一方,牧草地斜面では,8cm 深でイベント後の排水は速やかだが,さらに深い層では排水はほとんど行われなかった。また,20mm/h 以上の降雨では,森林斜面の 38cm 深と牧草地斜面の 8cm 以深で飽和状態となった。以上から,イベント時は透水性のよい層の下で浸透流がさかんであることがわかった。ここでは,得られた土壌水分データを用いて降雨と融雪の各イベントごとの38cm 深での降下浸透量を求めた。他方,タンクモデルによって佐呂間別川に対する流出解析を実施し,結果として,降雨・融雪イベント時に応答の早い直接流出(表面流出+ 中間流出)が 70%以上を占めることがわかった。この直接流出量と先に求めた降下浸透量を比較すると,全体として明瞭な直線関係が認められた。このことより,流出解析で得られる直接流出は,実際には土壌表層下の浸透流として発生することが示唆された。
- 日本水文科学会の論文
日本水文科学会 | 論文
- 山地源流域の湧水の形成過程に及ぼす岩盤地下水の影響
- 湖水の循環と混合
- 日本水文科学会ハワイ火山水文巡検報告(その3)マウイ島のUSGSの実験流域
- 日本水文科学会ハワイ火山水文巡検報告(その2)マウイ島の自然環境と水利用
- 富士山周辺の湧水および地下水の水質について