頭頸部腺様嚢胞癌の治療成績と臨床病理組織学的予後因子の検討
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概要
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1988年7月から2007年12月までの期間に慶應義塾大学病院耳鼻咽喉科にて一次治療を行った頭頸部腺様嚢胞癌30症例を対象に, 臨床病理組織学的評価に基づいて治療成績と予後因子に関する統計学的検討を行った. 原発部位では耳下腺10例, 顎下腺4例と大唾液腺が約半数を占めた. 30例全例に外科的切除を行い, うち10例に術後照射を施行した. 5年/10年疾患特異的生存率 (DSS) は73.9%/62.4%, 5年/10年非担癌生存率 (DFS) は64.3%/59.7%であった. 予後因子として単変量解析ではDSSで神経周囲浸潤 (p=0.010), リンパ管浸潤 (p=0.036) に, DFSでT分類(p=0.044), 切除断端 (p=0.012), 神経周囲浸潤 (p=0.019) に有意差を認めた. 多変量解析の結果, 独立予後因子はDSSでは神経周囲浸潤 (p=0.034, リスク比=9.530), DFSでは切除断端 (p=0.038, リスク比=8.897) であった. 病理組織 grade 分類と生存率との相関は認められなかった. 治療成績向上には初回手術時における切除範囲の拡大や切除断端陽性例に対する積極的な追加切除が必要と考えられる一方, 長期的には高い遠隔転移率が認められることから外科的切除単独では限界があると考えられた. 将来的には分子生物学的指標も加えた予後推定に基づく追加補助治療の個別化が望まれる.
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The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc. | 論文
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