石西礁湖における枝状ミドリイシ群集の回復阻害要因の検討
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概要
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日本最大のサンゴ礁である石西礁湖における枝状ミドリイシ群集の回復阻害要因を検討するため,サンゴ群集形成の基礎的パラメータとなる幼生加入量,移植した成体の生残・成長率,栄養塩および底質環境を調査した。石西礁湖中央部において,かつては枝状ミドリイシが密生していた「未回復域」と現在も枝状ミドリイシが群生する「健全域」のそれぞれで4定点を設け,上記の各パラメータを比較した。群集の自然回復力を推定する上で重要な幼生加入量は,いずれの地点でも極めて低い水準(3個体以下/176cm<SUP>2</SUP>)であったが,特に「未回復」域で少なかった(平均0.5個体以下/176cm<SUP>2</SUP>)。成体の生残・成長率は,「未回復」と「健全」域では目立った違いは見られなかったが,地点ごとに大きく異なり,群体の移植方法の違い(海底接着法あるいは底上げ法)によっても異なった。栄養塩環境としては,亜硝酸塩,リン酸塩濃度およびクロロフィルα量が「未回復域」で有意に高く,サンゴと海藻類との競争関係に与える影響などをさらに精査する必要がある。以上のことから,幼生加入の不足,海水の僅かな富栄養状態が群集の回復阻害要因のひとつと推測される。また,養殖種苗等を使った移植による修復を試みる場合は,数km<SUP>2</SUP>程度の狭い地域内であっても,場所ごとに最適な方法を事前に調査すべきであることが示唆された。
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日本サンゴ礁学会 | 論文
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