濃厚血小板に混入したMSSAにより発症した敗血症の1例
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概要
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背景: 近年,輸血による細菌感染症の報告は増加傾向にある.しかし,輸血との因果関係を直接証明した症例はほとんどない.今回,濃厚血小板(PC)の細菌汚染により発症した敗血症の一例を経験したので報告する. 症例: 70歳男性.再生不良性貧血にて愛知医科大学病院外来通院中.血小板10,000/μl,ヘモグロビン7.9g/dlのためPC輸血,引き続き赤血球(RBC)輸血を受けた.RBC輸血開始後15分より,発熱,軽度の呼吸困難が出現し,感染症疑いにて入院となった.入院後無菌室にて抗生物質等の抗菌剤の投与を受け,全身状態は比較的安定していたが,翌朝死亡が確認された.病理解剖の承諾は得られなかった. 原因検索のため,発熱時に患者血液検査及び血液培養を行った.さらに,PCバッグ,セグメントチューブおよびRBCバッグ内の残余血液を用いて血液培養を施行した.患者白血球は著明に減少しており(300/μl),初期の血液培養にて黄色ブドウ球菌が検出されたことより,敗血症と診断された.一方,PCバッグ,セグメントチューブ双方から黄色ブドウ球菌が検出されたが,RBCバッグから菌は検出されなかった.これら3種(患者血液,PCバッグおよびセグメントチューブ)の菌株に対する薬剤感受性試験より,全てmethicillin-sensitive Staphylococcus aureus(MSSA)と判定され,さらに感受性パターン,コアグラーゼ試験,遺伝子検査により,全て同一と判定されたことより,PCに混入したMSSAにより発症した敗血症であることが明らかとなった. 結語: 輸血による細菌感染を疑った場合,患者のみならず,該当製剤バック内,さらにはセグメント内の血液を用いて細菌培養することが重要と考えられた.また,MSSAなどの皮膚常在菌は採血の際に血液製剤に混入する可能性があるため,特に常温保存のPCについては感染の危険性を認識する必要があると考えられた.
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