ワルファリン療法中の頭蓋内出血例に対する第IX因子複合体投与の効果
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概要
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【背景と目的】ワルファリンは血栓塞栓症の予防・治療の目的で広く用いられている薬物である。しかし,脳出血などの合併症を起こすと時に致命的となることが知られている。ワルファリン服用中の凝固能の補正には,ビタミンK製剤や新鮮凍結血漿(fresh frozen plasma: FFP)が投与されるが,補正効果の発現には数時間を要する。一方,ヒト血液凝固第IX因子複合体(以下第IX因子複合体)を使用した場合には迅速な凝固能の補正が得られる。本研究の目的は,ワルファリン療法中の頭蓋内出血例に対し第IX因子複合体を投与し,その効果を検証することである。【対象と方法】ワルファリン療法中の頭蓋内出血例で,初診時のPT-INRが1.5以上であり,第IX因子複合体を投与した12例を第IX因子複合体投与群とした。凝固能の指標として,初診時と第IX因子複合体投与10分後および第1病日にPT-INRを測定した。また,第IX因子複合体による治療プロトコール導入以前に,ワルファリン療法中に頭蓋内出血を合併し,ビタミンK製剤やFFPにより凝固能を補正した7例を対照群とした。【結果】頭蓋内出血の診療開始から24時間以内のFFPの投与量は対照群で983±818mlであったのに対して,第IX因子複合体投与群では193±286mlであり,有意に少なかった(p<0.05)。第IX因子複合体投与群においてPT-INRが2.94±1.14から投与10分後には1.60±0.28に有意に短縮した(p<0.05)。発症から1か月後の転帰では両群間に有意差を認めなかった。【結語】今回の検討では,第IX因子複合体投与により有意な予後改善効果は認めなかった。また,PT-INRは短時間で短縮し,FFPの使用にかかわる医療費が抑制される可能性が示された。本邦では第IX因子複合体はワルファリン療法中の頭蓋内出血例が保険適応となっておらず,またガイドラインでもその投与量が示されていないため早急な対応が望まれる。
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一般社団法人 日本救急医学会 | 論文
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