妊娠39週に脳梗塞を発症し血栓溶解療法を行った1例
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概要
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妊娠中は非妊娠期に比較し,脳血管障害発症のリスクは決して高くなく,とくに脳梗塞では,むしろそのリスクは低くなる。今回妊娠39週に発症し,早期に診断・治療し得た脳梗塞の1例を経験したので文献的考察を加え報告する。症例は34歳,女性。既往に特記すべきことなし。病歴:妊娠39週2日。14時45分頃に構音障害,左片麻痺を主訴に救急要請。16時16分病院到着。来院時軽度の見当識障害を認めたがvital signは安定。構音障害と左不全麻痺を認めた。初療時National Institute of Health Stroke Scale(NIHSS)は8点。発症2時間後のcomputed tomographyで右中大脳動脈領域において皮髄境界の不明瞭化を認めた。発症2時間30分後のmagnetic resonance imagingでは拡散強調画像にて右中大脳動脈領域に高信号域を認め,脳梗塞と診断し血栓溶解療法の適応と判断した。しかし,妊婦であり,胎児への影響および出産に与える影響を考慮し,種々の治療手段の中から,urokinase動注の選択となった。治療後患者のNIHSSは1点まで改善し,第3病日に帝王切開にて女児(体重2,616g,apgar score 8点)を出産した。その後母児とも問題なく経過し,第17病日に退院した。経過中に膠原病,先天性の凝固異常および血管炎症候群等の検索を施行しているが,明らかな疾患は指摘できなかった。本症例は,34歳という若年で脳梗塞を発症した症例であり,妊娠39週2日での発症であるため胎児と母体双方への影響を考慮しつつ時間的制約をもって治療方針の決定をする必要から,その判断に難渋する症例であった。今後妊婦に対する血栓溶解療法の適応の検討が必要である。
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一般社団法人 日本救急医学会 | 論文
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