熱帯山地林と温帯照葉樹林の比較群集論 ニッチ分割パターンの比較
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概要
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タイのドイ·インタノンの熱帯山地林と日本の春日山の照葉樹林に設置した大面積調査区を利用して,林冠木構成種の地形的ニッチと更新ニッチの分割パターンの比較を行った。ドイ·インタノン調査区と春日山調査区での林冠木出現種数はそれぞれ91 種と56 種で,多様性の違いは大きいが,地形的な多様性は両調査区で同程度,もしくは春日山でより多様であった。それぞれの調査区を20m × 20m のメッシュに分割して,種の在・不在データを用いてdetrended correspondence analysis (DCA)を行い,種組成の主要な変動軸を抽出した。ドイ·インタノン調査区で得られたDCA1 軸のメッシュスコアは標高,斜面傾斜,斜面方位,斜面の凸度指数によって70% が説明でき,メッシュ内の胸高断面積合計は回帰に貢献しなかった。一方,春日山調査区で得られた日ごA1 軸のメッシュスコアは標高,斜面傾斜,斜面の凸度指数に加え胸高断面積合計によって37% が説明されたに過ぎなかった。日ごA1 軸ならびに斜面凸度指数をニッチ軸として構成種のニッチ幅とニッチ重複度を比較すると, ドイ·インタノン調査区のほうがニッチ幅が狭く,ニッチの重複が小さく,よりきめ細かなニッチ分割が行われていることが明らかとなった。ドイ·インタノン調査区ではDCA1 軸ならびに斜面凸度指数の変化に伴う種組成の変異が大きく,春日山調査区に比べてinternal β多様性が高いことが明らかとなった。以上のことからドイ·インタノンの熱帯山地林での高い種の多様性は,きめ細かな地形的ニッチ分割と結び、ついていることが示唆された。
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