森林生態系における物質分解の地域性と普遍性
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概要
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森林生態系の構造と機能との関連から,物質分解の特性を考察した。巨大な森林構造を支え,現存量の大半をしめる大形材器官の分解は,葉や小枝などの微細リターとくらべ,緩やかに進行する。大形枯死材では,腐朽の進行にともないその物理·化学的特性が徐々に崩壊する。それが結果として分解者に対し正のフィードバックとして働き,分解速度が次第に高まる。そのため,枯死材重量は,その生長過程で描かれたロジスチック曲線を逆にたどるパターンで消失してゆく。両過程はともに材の容積比重をパラメータとして連関している。すなわち,容積比重が低い材ほど,生長も速いが分解も速い。枯死材の平均回転率で評価した分解能は,発達した熱帯多雨林においては材器官の合成能の約6倍である。分解者と生産者の環境に対する反応が違うため,この分解能/合成能の比率は気候により異なる。動的平衡状態下にある生態系において,両者の比によって決定される遺体集積量に対する年平均気温と植物遺体の耐久性の影響を,シミュレーションにより考察した。冬場の低温が厳しい照葉樹林と,乾季にひどく乾燥する熱帯季節林を例に,物質分解の重要な環境要因である温度と水分の影響を評価し,また生産過程との関連から生態系全体の機能への影響も考察した。
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