有明海・八代海の再生 森・川・海の自然連鎖系を重視した有明海・八代海の再生
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概要
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本特集は2003年10月5日に開催された応用生態工学年次研究発表会の際に開催された「有明海·八代海ミニシンポジウム—森·川·海の自然連鎖系を考える—」における内容を充実させて構成したものである.なお,構成の基本的考え方は内容報告の意味もあるため,その時のままにしてある.東京湾,伊勢湾·三河湾,大阪湾·瀬戸内海,有明海·八代海を始めとする閉鎖性水域やその他の沿岸域の生物生産基盤,生態系および環境質の劣化は目に余るものがある.我が国が,安心して生活できる国,長期にわたり安全な国であるために環境面からしなければならないことは,まず第1に生物生産基盤を維持して国民のための食糧確保·資源供給を常時可能にすること,第2に遺伝子資源保全のために生態系を保持し得るように国土環境を維持すること,第3に身の回りの生活環境におけるリスクを低減させるとともに快適さや安らぎ感を増すことである.自然環境や生態系の再生は,これらが自己修復機能を有している間に,つまり生物群やその生息環境が復元される可能性がある間になされなければならない.再生機能が失われ,生物種が絶滅してからでは手遅れである.東京湾,伊勢湾,瀬戸内海では,臨海部の産業が国外に移転した影響もあり,わずかには改善の兆しが見えているが,有明海·八代海では自己回復機能がかなり低下しており,回復不能の環境劣化スパイラルに入り込んでいるようにも見える.有明海·八代海沿岸域には立地している産業が少なく,有明海·八代海流域の産業別就業者数は1次産業では21万人,2次産業では46万人,3次産業では111万人で(2000年国勢調査),1次産業が12%(有明海流域では11%,八代海流域では17%)と多くを占めていることから,環境の改善手法は,東京湾,伊勢湾,瀬戸内海で採られた構造物建設に対する制御を主体としたものとは異なるはずである.
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