寒河江ダム貯水池と流入河川のエコトーンにおける堆積土砂と土壌環境特性の空間分布
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概要
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年間約 50 m の水位変動が生じる寒河江ダム貯水池を対象とし,土砂堆積が卓越する貯水池・河川間のエコトーンにおける堆積土砂及び土壌環境特性の空間分布を明らかにし,水位操作がエコトーンでの物質動態に与える影響を検討することを目的とした.エコトーンにおける流下方向の変化を確認するために河川横断方向の測線を 5 本設定し (Line- 1~5), 測線上の複数の地点において,2009 年6~10 月と 2010 年 10 月に土壌,土壌間隙水,表流水を採取し,土壌環境特性を調査した.その結果,高水位期 ( 6 月)には表層土壌の粒径分布と有機物含量は流下方向に大きな変化はなく,エコトーンが止水帯である時に輸送されてきた土砂が堆積していたと考えられた.一方で低水位期 ( 8~10 月) は下流側ほど粒径が細かく,有機物含量の多い土砂が堆積していた.これは,水位低下に伴い,エコトーンは流水帯の性質を帯び,上流の細かい土砂,特に軽い有機物が掃流され,流下方向に堆積物粒径と有機物量の変化が現れたと考えられた.そして,干出後 50~70 日程度の堆積物における土壌環境特性の調査の結果,土壌中間隙水はLine-1 で好気的 (酸化還元電位:227 mV), Line-4 で嫌気的 (-35~-19 mV)であり,その間は徐々に嫌気化する傾向にあった.重回帰分析の結果,酸化還元電位と微細有機物含量に負の相関があり,その要因として,微細有機物を多く含む土壌は透水係数が低く含水比が高いことにより,大気から酸素が供給されにくいと考えられた.エコトーン下流部で確認されたメタン生成は,このような還元的条件と高い溶存態有機物濃度に起因する可能性が高い.以上より,水位低下により土砂を干出させても,30 cm 以深の微細有機物含量の多い堆積層は,干出後 50 日程度でも好気的になりにくいことが本研究で確認され,このような堆積層は嫌気的な有機物分解によるメタン生成を伴うことが示唆された.
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