溜め池周辺水域におけるオオクチバスとブルーギルの分布および個体数変動
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概要
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オオクチバスとブルーギルは全国各地に分布する外来魚であり,溜め池がそれらの主要な生息場所となっている.本研究では,溜め池につながる農業水路および河川における両種の分布および個体数変動を観測することにより,溜め池から水路を介した両種の自然分散の可能性について検討した.愛媛県松山市近郊の重信川流域において両種が生息する溜め池を6つ選び,それぞれの池につながる農業水路,およびそれらとつながる河川に21箇所の調査地を設定し,各調査地において,2002年の春から2003年の秋までの期間中,定期的に(冬を除いて基本的には毎月1回),両種の個体数密度を調査した.その結果,溜め池周辺の農業水路においては,どの調査地においても両種もしくはそのうちのどちらかの生息が確認され,魚類群集全体に占める両外来種の割合は41.9%に達した(調査期間中の,のべ推定個体数に基づく算出).両種ともに,夏季に溜め池の取水口直下の水路において非常に高密度(最大値,オオクチバス:8.0個体/m<SUP>2</SUP>;ブルーギル:12.1個体/m<SUP>2</SUP>)に達したが,その一方で,どの調査地においても生息が確認されない時期が多かった.つまり,水路での生息は一時的であった.また,これら水路で採捕された個体の多くは小型個体(尾叉長<10cm)であった.今回対象とした水路は全て,溜め池から河川に至るまでのほぼ全区間にわたって三面コンクリート水路(幅1∼2m)となっており,かつ,1つを除く全ての水路において魚類の遡上障壁となり得る鉛直落差が存在した.これらのことより,農業水路で確認された両種個体は,溜め池から流出したものと推測された.
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