黒ボク土壌水田での裏作カバークロップの窒素吸収量と土壌窒素の動態
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概要
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茨城大学農学部附属農場(黒ボク土壌)において,2000~2001年および2001~2002年にわたり,水稲栽培後にイネ科のカバークロップを栽培し,カバークロップの種類と土壌窒素の吸収量を比較した.イネ科カバークロップとしてライムギ,ライコムギ,コムギ,エンバクおよび裸地圃場を設定した.これらの地上部での窒素動態とあわせて土壌無機態窒素の動態について調査した.耕地内土壌窒素の最適管理という視点から水田での環境保全的な土地利用システムに関する基礎資料を得ることを目的とした.<BR>1)カバークロップの乾物重は,両試験年ともに3月でいずれの種類も0.5Mgha<SUP>−1</SUP>以下であった.2001年4月では,カバークロップの種類別ではライムギがもっとも多くの乾物重を確保し,次いでライコムギが2.3Mgha<SUP>−1</SUP>であり,コムギとエンバクではライムギの20%程度であった.これに対し,2002年4月ではコムギが最も大きい乾物重を示し,次いでライムギおよびライコムギであった.また,土壌窒素レベルによって乾物重は著しく増大した.<BR>2)カバークロップの窒素吸収量は,2001年3月および4月ではライムギがもっとも大きい値を示し,次いでライコムギとコムギであり,エンバクではライムギの36~55%に留まった.2002年3月では,カバークロップの窒素吸収量は前年よりも少ない値を示したが,カバークロップの種類間では大きな差異が認められなかった.また,土壌窒素レベルによって窒素吸収量は増大した.<BR>3)カバークロップの種類が土壌無機態窒素分布に及ぼす影響をみると,2001年4月では表層では,裸地区で24.8mgNkg<SUP>−1</SUP>と最も高く,次いでエンバクであり,ライムギ,ライコムギおよびコムギでは11~14mgNkg<SUP>−1</SUP>と低い値を示した.また,土壌窒素レベルでは無施肥に比べて施肥区では6mgNkg<SUP>−1</SUP>高い値を示した.これに対し,2002年では処理間において有意な差異が認められなかったが,裸地区でカバークロップ区よりも高い値を示す土層が多く認められた.<BR>4)カバークロップの吸収した窒素量は,土壌窒素が無施肥においても20~40kgNha<SUP>−1</SUP>の窒素成分を保持していることから,これらの後作での有効活用は施肥量削減の視点から注目されるものと考える.
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