斐伊川の東流イベントとそれが及ぼす堆積環境への影響
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概要
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宍道湖から得られた表層堆積物と2本のコアについて堆積学的・地球化学的解析を行い, 現世および斐伊川東流イベント前後の堆積環境を比較した.低鹹汽水湖である現在の宍道湖では, 斐伊川起源の細粒砕屑物を堆積させるシステムと, 大橋川からの密度流によって運搬された粗粒堆積物を堆積させるシステムの両方の特徴を持った堆積物が認められる. 斐伊川東流イベント前の宍道湖は, 生物生産性が低く, 堆積速度が遅い還元的な汽水環境を示す. これは斐伊川以外の河川の流入量が減少し, 宍道湖への栄養塩および砕屑物の負荷量が減少したことによると思われる. 当時の堆積システムは, 両コアとも堆積物のモード径が粗く, 湖心側で細かいことから, 大橋川からの密度流に起因するものであったと推定した.斐伊川東流イベント後の平均的な堆積速度は, イベント前と比較すると4~6倍速い堆積速度を示す. これは, 斐伊川の流路変更により, 宍道湖が斐伊川河口のある西側から大きく埋積されていったことを示している. 粒度頻度分布の解析から, 斐伊川東流イベント後の堆積システムは, 現在と同様な堆積システムを持っている. 粒度頻度分布におけるモード径と最頻値, TOC/TN比の層位的な変化から, 時間とともに斐伊川の流量が増加したことが推定される.
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