腹部救急領域における栄養管理 汎発性腹膜炎術後経口摂取導入過程における栄養補助療法の検討
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概要
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【目的】種々の病態において経腸栄養法の有用性が認められている。しかし,腹膜炎術後にては,経腸栄養療法を選択する際の臨床データが乏しく,経口摂取が開始された後も増大した安静時必要カロリーを補充するために中心静脈栄養が併用されることが多い。われわれは腹膜炎術後の急性期離脱後過程における経腸栄養療法の在院期間,コスト,有害事象,feasibilityを検討する無作為化比較試験を計画した。【方法】汎発性腹膜炎術後3~7日以内に経口摂取が可能となった症例を対象とした。ICが得られた後,経口摂取に加えて高カロリー輸液併用(TPN群),経腸栄養併用(EN群)に無作為に割り付けを行った。経腸栄養剤はラコールを用い,症例の状況により経口的あるいは経管的に投与ルートを選択した。高カロリー輸液剤はネオパレンを用いた。両群とも投与カロリーは経口摂取量と合わせ 25~35kcal/kg/dayを目標とした。両群とも最低 1週間はプロトコールに従うこととした。なお,尿量等から判断して水分,電解質補正を経静脈的に行う際は 7.5%以上の糖質を含有する製剤,アミノ酸を含有する製剤は用いないこととした。【結果】現在まで TPN群15例,EN群15例が登録された。両群間に年齢,手術時間,出血量に差は認めていない。経口摂取開始日(エントリー日)は TPN群 5.8±1.7病日(mean±SD),EN群 6.1±1.1病日,登録時のAPACHE II scoreはTPN群13.7±4.1,EN群12.6±4.6だった。TPN群で1例がカテーテル感染のためdrop outとなった以外は目標投与カロリー,プロトコールを完遂できた。アルブミン,レチノール結合蛋白,尿中3-メチルヒスチジン,尿中クレアチニン,ω3/ω 6比,コレステロール,TG,遊離脂肪酸などの指標には差は認めなかった。有害事象は腹部症状がTPN群5例,EN群4例,感染性合併症がTPN群にのみ6例認められた。経口摂取量は統計学的有意差はないが,EN群で多い傾向にあった。1日当たりの医療コストは,EN群で安価となった。【考察および結論】腹膜炎術後の経口摂取過程における経腸栄養の安全性,有用性が示唆された。
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