1型糖尿病治療に向けたヒト膵β細胞株の樹立
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概要
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1型糖尿病に対して膵島移植が注目されているが, 移植用膵臓の不足は深刻な問題である. ヒト膵島beta細胞株の樹立は, 低コストで大量培養が可能となるため, 糖尿病を標的とした移植医療やバイオ人工膵の開発にとって重要である. 今回我々は, Cre/loxPシステムを用いて不死化遺伝子 (SV40T, hTERT) を導入し可逆性不死化ヒト膵beta細胞株 (NAKT-15) を樹立した. In vitro 環境下において, NAKT-15細胞のinsulin発現は, Northern blot, Western blot, insulin測定において, 正常ヒト膵島細胞の約40%程度であった. また実際に糖尿病マウスに移植すると, マウスの高血糖は改善され200日以上の生存を確認し, 糖尿病の完全なコントロールが可能であった. 腎摘後, 速やかにマウスは高血糖を呈し, 血糖コントロールは細胞移植による効果であると示された. さらに, 摘出したグラフトの評価を行うと, in vivo 環境下ではNAKT-15細胞のinsulin発現は, Northern blot, Western blot, insulin測定において, 正常ヒト膵島細胞の約60%程度であった. このように, 可逆性不死化ヒト膵beta細胞株NAKT-15は, in vitro 及びin vivo の検討において, 正常ヒト膵島に匹敵する機能を有しており, 1型糖尿病治療におけるドナー不足克服に向けた第一歩となる可能性がある.
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