完全胸腔鏡下肺底区域切除を施行した左肺底区動脈大動脈起始症の1例
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概要
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症例は30代男性,血痰の精査加療目的に当院受診.胸部造影CTにて左肺動脈底区域枝の欠如と,胸部下行大動脈から左肺底区に流入する直径8 mmの異常動脈を認めた.気管支の分岐形態は正常で,左肺底区動脈大動脈起始症と診断し,完全胸腔鏡下に手術施行した.左肺下葉は底区域の胸膜面に怒張した血管網を認めたがS6は外観正常で温存可能と考え,底区域切除を施行した.異常動脈は自動縫合器で切離した.術後5ヵ月時点で問題なく経過中である.本症に対しては下葉切除を行った報告例が多いが,近年では異常動脈の灌流域等を考慮しS6が温存可能と考えられる症例に対し底区域切除が行われるようになってきている.アプローチは開胸や胸腔鏡補助下での報告例が多く,完全胸腔鏡下手術については安全性等の面から否定的な意見もあり報告例は少数にとどまっている.本症例では完全胸腔鏡下肺底区域切除を安全に施行し得たので文献的考察を加えて報告する.
- 特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会の論文