溶媒キャスト法により単一溶媒から作製したPVDFの結晶構造と物性との相関
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概要
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ポリフッ化ビニリデン(PVDF)は,I型,II型,III型の三つの結晶構造を有している.I型は平面ジグザグ構造をとり水素(δ+)とフッ素(δ)が配向分極し電気双極子が形成され,誘電体ポリマーとなる.一方,II型,III型はI型のような特異な電気特性は示さない.このように,PVDFの特性は結晶構造に依存すると予想されるが,結晶構造と各物性との詳細な相関関係はこれまで検討されていない.本報では,筆者らが以前に報告した,単一溶媒からPVDFの各結晶構造を作り分ける方法を用いて作製したPVDF I型,II型,III型において,残存溶媒の種類の影響を排除して光学物性,熱物性,電気物性を評価し,PVDFにおける結晶構造と物性との相関を明らかにした.波長800 nm (33 µmt)における光透過率は,PVDF I型が97%,PVDF III型が95%,PVDF II型が93%であった.また,融点は,PVDF I型は165°C,PVDF III型は173°C,PVDF II型は174°Cであった.さらに,比誘電率(1 kHz)は,PVDF I型が最も高く13,PVDF III型が11,PVDF II型が6となった.これより,PVDFの物性は,I型とII型で大きく異なり,TTTGTTTG′とI型とII型の中間のコンフォメーションを取るIII型は物性もその中間の値を示し,結晶構造の違いにより変化することが判明した.
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