過去25年間の北里大学皮膚科における転移性皮膚癌48症例の検討
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概要
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北里大学医学部附属病院皮膚科における過去25年間の転移性皮膚癌48症例の検討をおこなった。全例とも病理組織学的に確認され, 原発巣も明らかであるが, 間葉系腫瘍および皮膚癌からの皮膚転移は除いた。転移性皮膚癌の原発巣は肺癌, 乳癌, 胃癌の順で全体の70%を占めた。しかし, 全科の悪性腫瘍の発生頻度は1位が胃癌, 2位が結腸, 直腸, 肛門癌, 3位が気管, 気管支, 肺癌の順であり, 原発巣の頻度と皮膚転移とは必ずしも相関しなかった。皮膚への転移しやすさを求めると, 乳癌, 肺癌, 食道癌, 膵臓癌, 卵巣癌, 胃癌の順であった。なお, 頻度の高い転移性皮膚癌が発見された年齢は食道癌を除き50歳台と比較的若く, 皮膚転移から死亡にいたる期間は乳癌の25.60ヵ月を除くと3から5ヵ月で非常に短かった。転移などの悪性度を示すといわれるepidermal growth factor receptor(EGFR)が乳癌では皮膚転移巣, 原発巣ともに全例発現していた。以上から皮膚転移を起こしやすい癌と起こしにくい癌があるが, 胃癌のように胃集団検診や診断技術の向上が著しいと皮膚転移を起こす進行癌が減り, 結果として皮膚転移が減少していた。乳癌におけるEGFRの発現は皮膚転移を起こしやすい良いマーカーと思われるが, 転移性皮膚癌が先にみつかったあとで原発巣が発見されることは稀で, 治療に貢献することは皆無に等しい。他科との連携を良くして原発巣, 皮膚転移巣を総合的に解析していくことが今後の課題と思われた。
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日本皮膚科学会西部支部 | 論文
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