Exophiala jeanselmeiによる黒色真菌症
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概要
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<I>Exophiala jeanselmei</I>による黒色真菌症を報告した。症例は76才女子で, とくに誘因なく, 左手背に皮下結節を生じた。近医にて切開·排膿, さらに切除したが, 4ヵ月後, 手術瘢痕両側に同様の皮下結節を2個生じた。1個切除したところ, 病理組織学的に菌要素を認めたため, 当科を紹介された。初診時, 左手関節背に直径8mmの下床とは可動性のある境界鮮明な皮下結節がみられた。結節は嚢腫状に弾性硬に触れ, 皮膚には軽い発赤がみられた。その他に手術瘢痕を2個認めた。組織片より<I>Exophiala jeanselmei</I>を分離した。病理組織学的には, 皮下に巨細胞を混じた組織球と小円形細胞の浸潤よりなる壁に囲まれた膿瘍がみられ, 褐色調の胞子連鎖, 菌糸を認めた。他の施設で切除した2個の組織標本もほぼ同様な所見で, PAS陽性に染まる菌糸, 胞子, 胞子連鎖を多数認めた。単純に切除縫合したのみであるが, 再発はみられていない。自験例は臨床および病理組織学的には, 典型的な皮下嚢腫であつたが, その直径が8mmと非常に小さかつたことが特徴的である。また自験例は計3ヵ所の病変を認めたが, 多発した機序としては, 原発巣の切開·排膿あるいは切除時の播種ないし不十分な切除による局所再発が, 最も考えやすいと思われた。小さい皮下嚢腫を, 診察する際には, 常に本症も頭にいれ, 充分注意の上, 切除などの治療を行うとともに, 菌学的ならびに病理組織学的検査を行う必要があろうと考えられた。
- 日本皮膚科学会西部支部の論文
日本皮膚科学会西部支部 | 論文
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