ヘルペスウイルス(HHV1‐8)のウイルス学 3.サイトメガロウイルス(CMV)
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概要
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ヒトサイトメガロウイルス(human cytomegalovirus:HCMV,HHV-5)はヘルペスウイルス科のサイトメガロウイルス属を代表する2本鎖DNAウイルスである.ゲノムサイズは235 kbで,予想されるORFは250に上りヒトヘルペスウイルス中で最大である.幼小児期に不顕性感染し,その後,潜伏・持続感染によって人体に終生寄生する.免疫が脆弱な胎児や臓器移植・AIDS患者などではウイルス増殖による細胞・臓器傷害で生命を脅かし,胎内感染では小頭症,難聴,精神発達遅滞を生ずる.ゲノムには多数のアクセサリー遺伝子が存在し,この多くが免疫回避や細胞死抑制作用に関り,ウイルスはこれらの遺伝子産物を用いて宿主と共生する.潜伏感染が確認されている細胞は骨髄球系前駆細胞である.潜伏感染と再活性化の機構は解明されつつあるが,その分子メカニズムの全貌は未だ明らかではない.本邦では母体の抗体保有率の低下による母子感染の増加が危惧され,経胎盤感染に対する予防策の確立が急務となっている.最近HCMV臨床株特有の血管内皮・上皮細胞への侵入機構が明らかとなり,これを阻止する中和抗体やワクチンの開発が期待されている.さらに,加齢に伴ったHCMV反応性T細胞の増大が,免疫の老化を進行させる最も大きな要因と考えられている.
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