声門下狭窄と胃食道逆流の関与について:PPIを中心としたGERDの治療を併用した声門下狭窄の治療成績
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概要
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近年,胃食道逆流(以下GER)もしくは咽喉頭酸逆流(以下LPR)が難治性と考えられていた喉頭のさまざまな病変に関与していることが明らかになってきている。その一つとして,声門下狭窄があげられる。今回,われわれは9例の声門下狭窄症例を経験し,そのLPRとの関係について検討を行った。声門下狭窄の発症前の病歴は,気管内挿管後が4例,高位気管切開後が2例,輪状甲状間切開後が1例,特発性症例が2例であった。声門下狭窄発症とLPRとの関係について,GERDに典型的な症状についての問診や喉頭内視鏡所見,頸部側面X線写真やCTでの頸部食道壁の腫脹像の有無,VTR食道透視検査の異常所見について検討を行った。GERに典型的な症状については,3例で呑酸,ゲップ,吃逆等を認めたのみであったが,喉頭内視鏡所見では,披裂部および披裂間部粘膜の発赤・腫脹を8例で認め,頸部側面X線写真やCTでの頸部食道壁の腫脹像を7例で認めた。また,VTR食道透視検査においては食道蠕動低下,滑脱型食道ヘルニア,逆流等の異常所見を8例で認めた。また,声門下狭窄の状態は,発症から2カ月以内のものは浮腫状もしくは肉芽を伴っており,発症から6カ月以上のものは披裂間部のinter-arytenoid barの形成とともに瘢痕状を呈していた。この9症例に対して,PPIを中心としたGERに対する薬物療法を併用した治療を行った。その上で,8例でanterior cricoid splitおよびTチューブ留置を中心とした段階的手術治療を行い,1例はステロイド点滴治療を行った。その結果,全例で声門下狭窄は改善した。但し,2症例で,PPIの中止により声門下狭窄の再燃を認めたが,いずれもPPI再投与により改善した。以上のことから,LPRは声門下狭窄の直接的な原因もしくは増悪因子になり得ることが考えられ,声門下狭窄の治療にあたってはPPIを中心としたGERに対する薬物療法を併用することが重要であると考えられた。
- 特定非営利活動法人 日本気管食道科学会の論文
特定非営利活動法人 日本気管食道科学会 | 論文
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