難治性喉頭肉芽腫に対する声帯内自家脂肪注入術の治療成績
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概要
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喉頭肉芽腫は,悪性疾患を疑う場合を除いては,音声治療やプロトンポンプインヒビター(以下PPI)投与をはじめとする保存的治療が原則であり,術後再発率が高いことなどからも,切除術は「Last Resort」とされている。しかしながら,保存的治療にもかかわらず,増大した肉芽腫により高度の発声障害もしくは失声状態をきたして,やむを得ずに音声改善を目的とした切除術が必要となる症例も少なくない。われわれは,難治性喉頭肉芽腫が再発を繰り返す要因のひとつとしてまず声帯膜様部の萎縮が存在し,その状態で声門閉鎖を得るために披裂軟骨が代償性の過内転をおこし,披裂軟骨声帯突起部の機械的刺激が増強しているとの仮説を立てた。そこでMicrolaryngoscopy下に喉頭肉芽腫切除後,声帯膜様部に自家脂肪を注入して両側声帯膜様部をbulkyにすることによって声門閉鎖を改善し,披裂軟骨声帯突起部の切除断端が強く接触しないようにする方法を考案した。1999年5月より,声帯膜様部の萎縮をともなった14例の難治性喉頭肉芽腫に対して,Microlaryngoscopy下の肉芽腫切除術と同時に声帯内自家脂肪注入術を施行したところ,14例すべての症例で失声などの主訴が完全に消失し,全例において再発が見られなかった。喉頭肉芽腫に対しては原則的に保存的治療を行っているため,本術式による症例数はまだ少ないが,頻回の手術を含む他の治療法では再発を繰り返した難治性喉頭肉芽腫に対して,治癒率100%の高い成績が得られた。術後の創部の機械的刺激を減少させ,順調な上皮化を目指した喉頭肉芽腫切除後の声帯内自家脂肪注入術は,極めて有効な術式であると考えている。
- 特定非営利活動法人 日本気管食道科学会の論文
特定非営利活動法人 日本気管食道科学会 | 論文
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