左前頭葉梗塞で foreign accent syndrome を呈した矯正右利きの一例
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概要
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発症最初期にみられた anarthria による不規則な構音の歪みや置換の改善とともに,運動障害性構音障害や他の失語症状を伴わない純粋な foreign accent syndrome (FAS) を呈し,その後症状がほぼ消失した症例を報告した。症例は 47 歳,矯正右利きで,中枢性右顔面麻痺を伴う右片麻痺と呂律困難で発症した。頭部 MRI では中心前回中・下部を含む左前頭葉に梗塞を認めた。発症 5 日時点で見られた発話における音の不規則な歪み,置換や語頭音の繰り返しは発症 2 週後までに軽減,消失し,その一方で,自発話や単語,短文の音読,復唱時に prosody 障害が目立つようになった。すなわち,単語内のアクセントの移動や 1 単語における 2 単位のアクセントなどが頻発し,発話速度の増加もみられた。これらの特徴は患者の発話の聞き手に外国人様という印象を抱かせた。この prosody 障害は発症 7 ヵ月までに軽減,消失した。本症例の prosody 障害は,anarthria に随伴する prosody の平板化と発話速度の減少を主体とするタイプとも,右半球損傷でみられる感情表現の prosody 障害を主体とするタイプとも異なっており,平板化とは逆方向の prosody 障害や,発話速度の性急さなどの特徴から FAS と考えられた。
- 日本高次脳機能障害学会の論文
日本高次脳機能障害学会 | 論文
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