MELASの1例における高次脳機能障害の経過―書字障害の変化を中心に:─書字障害の変化を中心に
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概要
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初診時に左頭頂・側頭・後頭葉,再発時に右側同部位に病巣を認めたMELAS の 1 例における高次脳機能障害の経過を,書字障害を中心に報告した。症例は 35 歳右利き男性。初診時,神経心理学的には健忘失語と漢字優位の失書を認め,視覚イメージの想起障害もうかがわれた。約半年後に再発し,新たに左半側空間無視,視覚認知機能の低下,行為・構成障害が加わり,書字障害は増悪していた。漢字は写字から困難で,仮名では文字を構成する要素の回転や脱落,重なるべき複数の要素が重ならないなど特徴的な誤りを示し,図形の模写も困難であった。点結びやなぞり書きは可能で運筆の基本的機能は保たれていたが,図形を相対的に同位置に写す課題,2 点の位置の異同判断課題は低下していた。再発後のこのような障害には,(1) 同時に複数の対象に焦点をあてる能力の障害,(2) 物の向きに関する視知覚障害に加えて,(3) 内的な視空間座標の障害の関与が示唆された。
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日本高次脳機能障害学会 | 論文
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