上腕骨近位部骨折の手術治療経験―当院での髄内釘とロッキングプレートの比較―:―当院での髄内釘とロッキングプレートの比較―
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概要
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上腕骨近位部骨折は,全骨折の4~5%を占め,骨粗鬆化の進んだ高齢者に発生しやすい.女性では男性の2倍以上に発生し,年齢別では60代から上昇しはじめ,80代女性で最も頻度が高いと言われている.今回,当院で行った髄内釘とロッキングプレートの手術治療成績を,文献的考察を加えて報告する.【症例】当院で,2004年4月から2009年12月までの間に加療した22症例22骨折を対象とした.髄内釘使用群(以下N群)が13例,ロッキングプレート使用群(以下LP群)が9例であった.各症例の術後機能評価を,日整会肩関節評価基準(以下JOA score)を用いて評価した.合併症についても調査した.【結果】JOA scoreは平均85.2点,N群86.9点,LP群82.8点であった.合併症として,骨片の再転位を2例に認め,うち1例に偽関節を生じた.骨頭壊死,腋窩神経麻痺,術後感染症,再骨折は認めなかった.【考察】髄内釘手術の利点は,皮切が小さく,骨折部の展開の必要性がないため,術後の疼痛も軽度であることが多い.また,手術手技が比較的容易で,手術時間も短いが,スクリュー後退,骨頭穿破,結節転位,骨壊死など合併症が起こりうる.ロッキングプレートは優れたangular stabilityを有し,粉砕の強い例や骨粗鬆の強い症例でも骨接合を可能とし,良好な成績が報告されているが,スクリューのカットアウト,骨頭穿破,内反変形が生じる可能性がある.当院での治療方針は,まず,骨片の転位が小さく,リハビリの受容が可能ならば,石黒法に準じた保存療法のひとつである早期運動療法の適応を考える.骨片の転位がある場合や,認知症でリハビリの受容ができない場合は手術加療の適応と判断している.手術加療については,骨折型や年齢により,小侵襲の骨接合術と,骨折部を展開してPHILOSを使用しての骨接合術,および人工骨頭挿入術を選択する.小侵襲の骨接合術は,腱板損傷がある場合は髄内釘かminimally invasive plate osteosynthesis(最小侵襲プレート固定法,以下MIPO)を行い,場合により腱板修復を追加する.損傷のない場合はNCB-PH® plate(Zimmer社製)によるMIPOを選択する.
- 西日本整形・災害外科学会の論文
西日本整形・災害外科学会 | 論文
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