硬膜外ブロックによる合併症・副作用とその防止対策
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概要
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術後の硬膜外ブロックは, 現在では質の高い術後疼痛管理法として広く用いられている. しかし, 副作用が出現すると鎮痛処置が制限されるため効果不十分となり, 患者満足度はますます低下する. またまれではあるが, さまざまな重篤な合併症が報告されている. 副作用や合併症の発生による入院期間の延長は, 結果としてコスト増加を引き起こす. 術後硬膜外ブロック中によくみられる副作用として, 悪心・嘔吐, 掻痒感, 下肢のしびれ感・運動麻痺, 低血圧, 呼吸抑制, 尿閉などがある. これらは, ある程度の頻度で必ず起こるが, 適切な対応により生命を脅かすような重篤な副作用となることは少ないため, 大きな注意が払われないことが多い. 術後痛研究会およびわれわれの調査結果でも, 悪心・嘔吐が最も多く30~50%, 下肢の運動麻痺・しびれが約30%で続き, 掻痒感も約20%の症例に認められた. 硬膜外ブロックの重篤な合併症としては, 硬膜外血腫, 膿瘍, 髄膜炎や脳炎, 全脊髄くも膜下麻酔, 局所麻酔薬中毒のように永続的な神経障害を残す, あるいはときとして致命的ともなる重篤な合併症が知られる. 最近, 硬膜外腔の貯留物が脊柱管を前方に圧迫することによって神経症状を呈するEpidural Compartment Syndromeという概念も報告されている. これらの重篤な合併症の発生はまれであるが, 硬膜外鎮痛法を用いるときは常に念頭におく必要がある. 合併症防止対策としては, 術後回診による一人ひとりの患者に応じた対応を確実に行うとともに, 病棟での管理であるということを念頭におき, 安全を最優先に考えたうえでの対処が必要である. 他科医師や看護師の教育とともに副作用に対する対応や器械の操作など基本的なことはマニュアルで示し, さらに講義など教育の場を設けて周知をはかる必要がある.
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