水循環スーツ着用時の熱抽出量,皮膚温,皮膚血流と運動時の深部体温変動との関係
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概要
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本研究は水循環スーツ(WPS)着用時の熱抽出量(HE)や皮膚温,皮膚血流(SkBF)と運動時の深部体温変動との関係について解析するため,健康な成人男性7名を対象とし,30℃に設定した部屋にて 250 W/m2 の軽度負荷で自転車漕ぎ運動を40分間行った.実験条件は (1) 18℃(以下,W18),(2) 24℃(以下,W24),(3) 30℃(以下,W30),(4) 32.5℃(以下,W32.5),(5) 35℃(以下,W35)の水を WPS に循環させる5条件に,競泳用パンツのみを着用した裸体(NU)を加えた計6条件にて,運動時の中枢温(Tes),活動部位深部温(大腿部深部温,T-d.thigh),平均皮膚温(Tsk),心拍数(HR),SkBF と総発汗量(TSL)を測定した.また HE は WPS の入口と出口の水温差から算出した.その結果,NU と W24 の Tes,T-d.thigh,HR,TSL は類似していたが,W32.5 と W35 のそれらは NU よりも高値を示した.W30,W32.5,W35 条件による SkBF の上昇は Tes の上昇(⊿Tes)が0.3℃を超えると抑制された.しかし,NU, W18, W24 条件では SkBF の上昇に伴って ⊿Tes は0.3℃程度に維持された.また運動終了時の ⊿Tes は Tsk が35.5℃を超え,HE が 125 W よりも小さいと顕著に上昇した.さらに WPS 着用条件について,HE は T-d.thigh(⊿T-d.thigh,r=−0.807,p<0.001)や Tsk(⊿Tsk,r=−0.856,p<0.001)の安静時からの変化量,および末梢の血流量とその温度の指標と考えられる ⊿Tsk×SkBF(r=−0.857,p<0.001)とも有意な負の相関関係を示した.運動終了時の ⊿Tsk×SkBF が負である場合は ⊿Tes は一定の値を維持したが,⊿Tsk×SkBF が正である場合は ⊿Tes は顕著に上昇した.これらの結果から,WPS 着用時の異なった循環水温条件において,軽運動時の ⊿Tes を抑制できる HE,⊿Tsk や ⊿Tsk×SkBF の閾値が存在し,それらは末梢の血流量とその温度に関係することが示唆された.
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