第39回河口湖心臓討論会 ヒトES細胞の血管再生療法への応用;現状と展望
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概要
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無限の増殖性と多分化能を有するES細胞は, 目的とする臓器の幹細胞/前駆細胞をきわめて初期の段階から高い精度で同定することができ,またその分化過程を<I>in vitro</I> で正確にトレースすることが可能であるとともに,必要とする分化段階の細胞を十分な増殖能を維持したまま準備することができるため,再生医療においてきわめて魅力的な細胞ソースと考えられる. われわれは, 血管を構成する内皮細胞と壁細胞(ペリサイトおよび血管平滑筋細胞) の双方に分化し<I>in vitro</I> で血管を構築しうる細胞として,マウスES細胞(embryonic stem cell)から "血管前駆細胞(vascularprogenitor cells : VPC)"を同定した.マウスVPCはVEGF受容体Flk-1陽性細胞であった.その後われわれは,ヒトにおいては, VPC はTRA1-Flk-1+VEカドヘリンーPDGFR+の細胞であることを明らかにした. このヒトVPCをもとにした生体への細胞移植実験を実施し,移植ヒトES細胞の分化段階,増殖能について検討したところ,未分化性の高いVPCは生体への移植において, その生着能は低く, 一方VPCから分化誘導した発生初期の内皮系細胞および血管平滑筋細胞は,増殖能が高く,<I>in vitro</I> での継代培養により,その分化度を維持したまま増幅が可能であることが明らかとなった. これらヒトES細胞由来の血管細胞は, 皮下移植および虚血部の血管内への直接投与においても, 生着効率が高く, 移植局所において, 再生血管構築に寄与した. さらに, VPCから分化させた内皮細胞と血管平滑筋細胞の双方を同時に移植したところ, より高次の血管構造を再現することができ, その結果, 長期の安定的な血流増加が認められた.また,ヒトES細胞由来VPCを用いた<I>in vitro</I> の血管発生分化系の遺伝子解析より, 血管拡張ホルモンであるアドレノメデュリンがES 細胞由来VPC から内皮細胞への分化を強力に誘湛することが明らかとなった. 今後, 体細胞核移植による自己ES 細胞の樹立などが行われれば, ヒトES 細胞の再生医療応用は一気にわれわれの眼前に迫ってくると考えられる.
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公益財団法人 日本心臓財団 | 論文
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