東北地域における稲作生産と外部条件:同時方程式モデルによる接近
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概要
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本論文の目的は, 稲作の中型技術体系が確立する直前とその後において, 東北地域農業 (稲作) とその内外的要因との関係がどのように変動していくか, そのメカニズムを同時方程式モデルを適用し, 計量的に解明することにある. 分析によって, 東北地域の稲作生産に農業基盤整備がどの程度効果をもったか, またその整備が, 東北地域における稲作の兼業形成にどの程度影響を及ぼしたかを明らかにする.本論文では, 投資効果を, 主として稲作の生産サイドに置き, 14本の構造方程式と11本の定義式からなる同時方程式モデルを構築し, 推定を行った. その際, 多項式分布ラグモデル, 単位根検定, 階差系列法や Cochrane-Orcutt 推定等を活用することによって, できる限りパラメータの安定性をチェックし, またRMS% error 等のテストを利用して, 同時方程式モデルを統計的に評価した後, 各種のシミュレーション分析を行った. 分析期間は1965年から1994までの30年間である. その結果は, 以下の通りである.1) 全体として, 農業基盤整備への投資は, 石油ショックと円高による要素価格の変動と連動して, 主に米生産費の変化に大きな影響を与える一方, 減反政策による米の減産, 米価政策の転換による政府買入れ米価の相対的な低落と関連して, 主として稲作の生産額の増減を大きく左右する.2) 年初限りの農業基盤整備への追加投資は, 1971年~1979年の期間にあっては, 農業機械の普及とあいまって, 労働時間の節減に顕著な効果を与え, また関連費用の増減に影響を及ぼしてきた. また, これらの効果を維持するためには, 連続的な投資が適当であったことが判明した.3) この追加投資は, 1970年代初めの中型農業機械の普及とも関連して, 結果的に第2種兼業農家数を増加させることとなった.4) 農業基盤整備への投資が稲作生産に与える種々の累積効果は, 当初に期待したほどのものではなかった. この原因として, 規模拡大の緩慢が, 程度の差こそあれ, 農業基盤整備が形成した潜在生産能力を十分に発揮することを妨げていたこと, また, 農業交易条件の変化も, 最終的に種々の累積効果に影響を及ぼしたこと等が考えられる.
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