行動および心電図の変化からみた視覚刺激に対する妊娠馬の反応
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概要
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サラブレッド種妊娠馬と非妊娠馬の,視覚刺激に対する反応性の相違を行動および心電図を指標として調べ,妊娠が雌馬の行動に及ぼす影響の一端を明らかにすることを目的とした。実験には,妊娠馬3頭と非妊娠馬2頭を用いた。まず,馬房内で各供試馬に心電図送信用テレメーターを装着後,安静状態で10分間にわたり心電図を記録した(安静期)。ついで,覆いをかけた視覚刺激用のウマ型等身大シルエットを設置した実験フィールドに連れ出し,10分間の心電図記録を行った。また,この時から供試馬の行動とフィールドにおける位置を2台のビデオレコーダーにより同時に記録した(馴致期)。さらに馴致期終了後シルエットの覆いを取り除き,シルエットに対する反応を10分間にわたり同様の方法で観察した(刺激期)。シルエット提示後,供試馬は全頭シルエットに接近し探索行動を行ったが,最初の探索行動において,妊娠馬は全頭シルエットの頭部から探索を開始したのに対して,非妊娠馬では頭部から探索を開始した個体はいなかった。また,非妊娠馬は短時間で直線的にシルエットに到達して探索行動を行い,その間の歩様も常歩のみであったのに対して,妊娠馬は迂回して比較的長い時間をかけてシルエットに到達し,その間の歩様には速歩あるいは駆歩が混じっていた。一方,安静期における平均心拍数は妊娠馬が非妊娠馬より有意に多く,馴致期の心拍数およびT波振幅代数和の平均値も妊娠馬の方が高い傾向にあった。視覚刺激後の心拍数は妊娠馬,非妊娠馬ともに増加し,その時の最高心拍数は有意ではなかったが妊娠馬の方が大きい傾向にあった。
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