大正中期の東京における居住地域構造
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概要
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関東大震災が起こる以前の大正中期の東京は,江戸時代からの城下町的伝統を一部に保ちながら,近代都市として脱皮しつつある途上で,近代都市としての都市構造が基本的に形成された時期である。 本稿は,大正中期の東京における居住地域構造を因子生態的方法によって解明した。まず,東京市内を816地区に区分し,各地区に関する19変数を入力変数として,データ行列を作成し,これに因子分析をくわえた。その結果,6つの共通因子が抽出され,それらの中で第1因子は家族的地位,第2因子は公務・自由業従事者,第3因子は高齢独身女性とそれぞれ解釈された。さらに,これら6因子の因子得点を入力変数として,クラスター分析を行ない,居住地域に関する5つの基本類型と5つの副類型とに区分した。そして,これらの居住地域に関する基本類型および副類型を利用して,大正中期の東京における居住地域構造の基本的な構造をモデル化した。その結果,この時期の東京における居住地域構造は,従来いわれていた「山手」・「下町」という単純な空間的モデルでは充分説明できないことがわかった。すなわち,東京の中心部は商業従事者の卓越地域であり,また,東部は子もち夫婦の工業従事者中世帯の卓越地域がみられ,この地域が当時の東京で最も広い面積を占めていた。これに対して,東京西部は公務・自由業従事者の卓越する地域であり,東京東部の縁辺部は工業労働者の卓越する地域であった。そして,大正中期の東京における居住地域構造は,江戸の都市構造に明治以後に形成された地域構造が改変・追加されることにより形成されていたとみることができ,したがって,当時の東京は都市的発展段階として,工業化途上の都市と位置づけることができる。
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