農業構造改革の類型論的検討
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概要
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農業基本法立案の中心人物の一人である小倉武一は,かつて,次のような反省を述べた.「自分は西欧の理論にとらわれていて,日本農業の現実を見なかった.日本農業と日本農村の性格を研究し,それをふまえて立案すべきものであった」と.本報告の課題は,小倉の反省をふまえて,農業構造改革の日本的類型を考察することである.日本で農業構造改革が順調に進まなかった最大の理由は,農政が農村社会の力を軽視したことである.伝統的な日本村落では,いわば,農地は村落の領土であり,農家にとっては家産であった.このような伝統をもつ日本農村で構造改革を実施するためには,まずは農民の農地所有権を守ることを明らかにし,そのうえで農地の所有と利用の分離を工夫することが必要である.そして,村の地権者集団の合意を得たうえで,経営能力があり信頼できる人やグループに農業経営を任せるべきであろう.しかし,これらの方途は,地域ごとで工夫する余地が大きい.したがってその形態もさまざまであり,また長期を要するだろう.以上の点において,日本型農業構造改革はWTOが想定する構造改革のイメージとは大きく異なるであろう.これらのことを,日本農政は,国の内外にはっきりと言明すべきである.
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