食料農業植物遺伝資源条約への加入を可能とする条文解釈の提案
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概要
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植物遺伝資源は長らく「人類共通の財産」と考えられ,自由に利用されるべきであるとされてきた.しかし,1993年に発効した生物多様性条約は遺伝資源への各国の主権的権利を認めた.そこで,FAOにおいて食料農業植物遺伝資源(PGRFA)の交換と利用の新たな多国間制度作りが進められ,2001年に食料農業植物遺伝資源条約(ITPGR)が採択された.しかし,わが国は条文第12条3項(d)がPGRFAの利用から生まれるDNA関連発明について特許を取得できるかどうか解釈が曖昧であるとして採択を棄権した.本論文の目的は,採択棄権の最大の理由となった本条文について,わが国の知的財産権制度との整合性を検討することである.この目的のため,条約の文脈に沿った用語の解釈を行うとともに,曖昧さが残る場合にはITPGRの準備作業での議論を援用し解釈を補充した.この結果,①PGRFAは,遺伝子といった遺伝的機能単位を含めた植物体およびその部分と考えられる,②条文中の「多国間制度から受領したそのままの形態で」という句は,前の句の「遺伝的部分もしくは構成要素」を修飾する,③多国間制度から受領したPGRFAから単離・精製された遺伝子は発明に該当し,PGRFAに内包されていた元の遺伝子「そのままの形態」ではない,④PGRFAから単離・精製した遺伝子の特許権は,そのPGRFAの「円滑なアクセス(取得の機会)を制限する知的財産権」に該当しない,と解釈できる.これらの解釈により,条文第12条3項(d)は,わが国の知的財産権制度と整合し,PGRFAからのDNA関連発明は,特許を取得できると結論できる.PGRFAを活用した品種育成を推進するため,今後ITPGRへの加入に向け,種苗業者,大学・研究機関および政府が連携して取り組むことが望まれる.
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Japanese Society for Tropical Agriculture | 論文
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