下顎前突症患者における術前矯正治療後の前歯歯軸傾斜
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概要
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骨格性下顎前突症患者における術前矯正治療による前歯歯軸のdecompensationの実態を把握すること,および術前矯正治療の有効性についてのエビデンスを得ることを目的とし,顎矯正手術直前の上下顎前歯歯軸と術前矯正治療中の歯軸変化について検討を行った。対象は,東京大学医学部附属病院(東大病院)において骨格性下顎前突症の顎矯正手術を行った53名である。小臼歯抜歯は,上顎では32名で,下顎では6名で行われていた。手術術式は,39名が下顎骨骨切り術単独(下顎枝矢状分割術または下顎枝垂直骨切り術),14名が上下顎移動術(上顎Le Fort I型骨切り術と下顎骨骨切り術の併用)であった。術前矯正治療は,20名が東大病院にて,33名が他院にて行われていた。初診時および術前矯正終了時(手術直前)に撮影された側面頭部X線規格写真のトレースより,SNA,SNB,ANB,Wits値,overjet,overbite,上下顎前歯歯軸(U1-FH,L1-MP)を計測した。また手術直前の歯列模型より,手術時の予定移動量を求めた。術前矯正治療は前歯歯軸のdecompensationに有効であったが,治療後も上顎前歯の唇側傾斜,下顎前歯の舌側傾斜が残存する症例が多くみられた。上顎前歯の唇側傾斜は小臼歯を抜歯した症例では改善する傾向がみられたが,非抜歯で治療した症例では悪化する傾向がみられた。下顎はほとんどの症例において非抜歯で治療され,下顎前歯の舌側傾斜は改善されていたものの多くの症例で十分ではなかった。上下顎移動術を行った症例では,下顎後方移動術のみを行った症例に比べ,上下顎の骨格的不調和や予定した顎骨移動量は大きかったものの,術前矯正治療後の前歯歯軸に大きな違いはみられなかった。これらの結果より,術前矯正治療は前歯歯軸のdecompensationに効果がある一方,多くの症例で術前矯正治療後もcompensationが残存していた。また,上顎前歯歯軸の改善には小臼歯抜歯が有効と思われた。今後,術前の叢生の程度,歯の移動に対する固定源の使用方法,術前矯正治療の目標設定などについて,より詳細な検討が必要と思われた。
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特定非営利活動法人 日本顎変形症学会 | 論文
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