化学の専門家が構造式から想起する化学物質の危険有害性に関する統計学的解析
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概要
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大学の実験研究では様々な化学物質が使われており、化学物質の種類や実験作業の仕方により危険性を伴う可能性がある。本研究では、化学の専門家が化合物の構造式から想起する危険有害性の評価軸を定量的に明らかにするため、大学等の実験安全に関わる教職員を対象に、構造式を提示し、想起される危険有害性(毒性、刺激性、引火性、総合的な危なさ)を5段階で評価するアンケートを実施した。アンケートには、汎用的な化合物17物質(化合物群A)と、汎用的ではない化合物12物質(化合物群B、架空の物質を含む)を用いた。化合物群AではGHS基準の危険有害性と回答傾向が一致しており、汎用的な化合物の危険有害性は概ね正しく認識されていることが示された。一方、化合物群Bにおける探索的因子分析により、未知の化合物の危険有害性には、汎用的な化合物の物性に関する知識を元に類推する場合と、元素や官能基などの部分構造、炭素数など全体構造を元に評価する場合があることが示唆された。また、想起する総合的な危なさには、毒性、刺激性、引火性の評価軸が複合的に寄与していることが相関分析により示された。 化学物質の使用経歴が多様な化学の専門家を対象とした本調査において、構造式から想起する危険有害性に統計的に有意な評価軸が確認されたことから、危険有害性に関する感性は、個別の研究経験に依存しない普遍的なメカニズムによって形成される可能性が示唆された。
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