北太平洋高緯度における中期中新世最温暖期の温暖化の度合: 二枚貝Kaneharaia の成長断面の安定同位体分析に基づいて
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概要
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16 Ma頃の中期中新世最温暖期(MMCO)は,新第三紀では最も温暖な期間であった.北太平洋地域におけるこの最温暖期のピークは,アラスカとカムチャッカの化石Kaneharaia(二枚貝網カガミガイ科)に記録されている.Kaneharaiaの化石標本は,北太平洋高緯度の初期中期中新世と認定した次の2 ヶ所産地から採集した.それはカムチャッカ半島北西部のシーアーチン層準とアラスカのナローケープ層である.これらの産地から多くのKaneharai 化石を採集し,最終的に成長に伴う炭素と酸素の安定同位体変動の分析可能な標本を得た.これらの化石の成長断面の分析値を,現在の亜熱帯域に生息するKaneharaia 類似の2 種のDosiniaの分析値と比較検討した。海洋のδ18Oの値をZachos等の用いた緯度補正を加味して-1.5 ‰と仮定すると,酸素同位体からのアラスカとカムチャッカの年平均水温は,それぞれ19.3 ℃と23.5 ℃,水温の年較差は19.8 ℃と11 ℃であることが示された.このような温度範囲は,現在の亜熱帯(北緯40 度)の混合水塊に比較可能で,北太平洋地域でのMMCO期の,まさに最温暖期のピークを示したものと考えられる. 同位体組成の変化幅とそれから推定される水温変動幅は,その層序的な変化パターンとともに,MMCO期の北太平洋高緯度域の温暖水塊が,現在の低緯度地域の温暖水塊のようには持続的に存在していたわけではないことを示している.そのかわり,表層の温暖水が西太平洋の亜熱帯地域から比較的短期間だけ流入し,一般的に冷温なこれらの地域に温暖性の貝類が入り込んだと判断される.
著者
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Marincovich Jr.
Department of Invertebrate Zoology & Geology, California Academy of Sciences, San Francisco
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K. Swart
Division of Marine Geology and Geophysics, Rosenstiel School of Marine and Atmospheric Sciences, University of Miami
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Oleinik Anton
Department of Geosciences, Florida Atlantic University
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Barinov Konstantin
Russian Academy of Sciences, Geological Institute
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B. Barinov
Russian Academy of Sciences, Geological Institute
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Marincovich Jr.
Department of Invertebrate Zoology and Geology, California Academy of Sciences
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